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魏志倭人伝全文解説 Part 3
この記事では、『魏志倭人伝』の中でもいちばん後半、卑弥呼の死とその後に起きた出来事、そして魏とのやり取りが書かれている部分の解説です。
邪馬台国の議論では、「卑弥呼が死んだ」「台与が立った」という話だけが強調されがちですが、実際の原文を読むと、その裏で何が起きていたのかが、かなり具体的に書かれています。
この記事では、意訳やまとめを先に置くのではなく、漢文の一語一語を確認しながら意味を整理するという、少し地味だけれど大切な読み方をしています。 「魏志倭人伝にはこう書いてある」という事実を、できるだけそのまま受け取ること。それが、このPart 1, 2, 3の基本姿勢です。
魏志倭人伝の全文(暗号文) Part 3/3
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特賜汝紺地句文錦三匹細班華罽五張白絹五十匹金八兩五尺刀二口銅鏡百枚真珠鈆丹各 五十斤皆裝封付難升米牛利還到録受悉可以示汝國中人使知國家哀汝故鄭重賜汝好物也 正始元年太守弓遵遣建中校尉梯儁等奉詔書印綬詣倭國拝假倭王弁齎詔賜金帛錦罽刀鏡 釆物倭王因使上表荅謝詔恩其四年倭王復遣使大夫伊聲耆掖邪狗等八人上獻生口倭錦絳 靑縑緜衣帛布丹木𤝔短弓矢掖邪狗等壹拝率善中郎將印綬其六年詔賜倭難升米黄幢付郡 假授其八年太守王頎到官倭女王卑彌呼與狗奴國男王卑彌弓呼素不和遣倭載斯烏越等詣 郡説相攻撃状遣塞曹掾史張政等因齎詔書黄幢拝假難升米爲檄告喩之卑彌呼以死大作冢 徑百餘歩徇葬者奴婢百餘人更立男王國中不服更相誅殺當時殺千餘人復立卑彌呼宗女壹 與年十三爲王國中遂定政等以檄告喩壹與壹與遣倭大夫率善中郎將掖邪狗等二十人送政 等還因詣薹獻上男女生口三十人貢白珠五千孔靑大句珠二枚異丈親錦二十匹 |
卑弥呼の朝貢

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1 |
特賜汝紺地句文錦三匹 |
- 特賜 = 特別に賜る
- 汝 = 汝(倭女王卑弥呼)に
- 紺地句文錦 = 紺色地に文様のある錦
- 三匹 = 三匹
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1 |
細班華罽五張 |
- 細班 = 精巧な斑文の
- 華罽 = 毛織物
- 五張 = 五張
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1 |
白絹五十匹 |
- 白絹 = 白い絹
- 五十匹 = 五十匹
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1 |
金八兩 |
- 金 = 黄金
- 八兩 = 八両
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1 |
五尺刀二口 |
- 五尺刀 = 五尺の刀
- 二口 = 二振り
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1 |
銅鏡百枚 |
- 銅鏡百枚 = 銅鏡百枚
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1 |
真珠鈆丹各五十斤 |
- 真珠 = 真珠
- 鈆丹 = 鉛丹(水銀の朱)
- 各 = それぞれ
- 五十斤 = 五十斤
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1 |
皆裝封付難升米牛利 |
- 皆 = すべて
- 裝封 = 封をして
- 付 = 託し
- 難升米牛利 = 難升米・牛利に
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1 |
還到録受悉 |
- 還到 = 帰着した後
- 録 = 記録し
- 受悉 = すべて受領させる
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1 |
可以示汝國中人 |
- 可以 = ~することができる
- 示 = 示し
- 汝國中人 = 汝の国の中の人々に
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1 |
使知國家哀汝 |
- 使 = ~させて
- 知 = 知らせる
- 國家 = 国家(魏)が
- 哀汝 = 汝を憐れみ思っていることを
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1 |
故鄭重賜汝好物也 |
- 故 = それゆえ
- 鄭重 = 丁重に
- 賜汝 = 汝に賜った
- 好物也 = 良い品なのである
西暦240年の卑弥呼の朝貢
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1 |
正始元年太守弓遵遣建中校尉梯儁等 |
- 正始元年 = 正始元年(西暦240年)
- 太守弓遵 = 帯方郡太守の弓遵が
- 遣 = 派遣し
- 建中校尉梯儁等 = 建中校尉・梯儁らを
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1 |
奉詔書印綬詣倭國 |
- 奉 = 奉じて
- 詔書印綬 = 詔書と印綬を
- 詣 = 赴かせ
- 倭國 = 倭国へ
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1 |
拝假倭王 |
- 拝 = 拝礼し
- 假 = 仮に授け
- 倭王 = 倭王とした
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1 |
弁齎詔賜金帛錦罽刀鏡釆物 |
- 弁齎 = あわせて持参し
- 詔賜 = 詔により賜った
- 金帛 = 金・絹
- 錦罽 = 錦・毛織物
- 刀鏡 = 刀と鏡
- 釆物 = 諸種の品物
卑弥呼の返礼
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1 |
倭王因使上表荅謝詔恩 |
- 倭王 = 倭王は
- 因 = そこで
- 使 = 使者を派遣し
- 上表 = 上表文を奉り
- 荅謝 = 応えて謝し
- 詔恩 = 詔の恩に謝意を示した
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1 |
其四年倭王復遣使 |
- 其四年 = その四年(正始四年・243年)
- 倭王 = 倭王は
- 復 = 再び
- 遣使 = 使者を派遣した
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1 |
大夫伊聲耆掖邪狗等八人 |
- 大夫 = 大夫
- 伊聲耆掖邪狗等 = 伊聲耆・掖邪狗ら
- 八人 = 八人
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1 |
上獻生口 |
- 上獻 = 献上し
- 生口 = 生口(奴隷)を
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1 |
倭錦絳靑縑緜衣帛布 |
- 倭錦 = 倭の錦
- 絳靑縑 = 紅青の絹
- 緜衣 = 綿衣
- 帛布 = 絹布
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1 |
丹木拊短弓矢 |
- 丹木 = 丹木
- 拊 = 毛皮
- 短弓矢 = 短弓と矢
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1 |
掖邪狗等壹拝 |
- 掖邪狗等 = 掖邪狗らは
- 壹拝 = 一度拝礼し
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1 |
率善中郎將印綬 |
- 率善中郎將 = 率善中郎将の
- 印綬 = 印と綬を授けられた
西暦245年の朝貢
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1 |
其六年詔賜倭難升米黄幢付郡假授 |
- 其六年 = その六年(正始六年・245年)
- 詔賜 = 詔により賜り
- 倭難升米 = 倭の難升米に
- 黄幢 = 黄色の幢(軍権の象徴)を
- 付郡 = 郡に付して与えた
- 假授 = 仮に授与した
西暦247年の朝貢
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1 |
其八年太守王頎到官 |
- 其八年 = その八年(正始八年・247年)
- 太守王頎 = 太守の王頎が
- 到官 = 着任した
卑弥呼と卑彌弓呼(狗奴國の王)の戦い

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1 |
倭女王卑彌呼與狗奴國男王卑彌弓呼素不和 |
- 倭女王卑彌呼 = 倭女王卑弥呼と
- 與 = ~と
- 狗奴國男王卑彌弓呼 = 狗奴国の男王・卑弥弓呼は
- 素不和 = 以前から不和であった
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1 |
遣倭載斯烏越等詣郡 |
- 遣 = 派遣し
- 倭載斯烏越等 = 倭の載斯烏越らを
- 詣郡 = 郡へ赴かせ
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1 |
説相攻撃状 |
- 説 = 説明し
- 相攻撃状 = 互いに攻撃している状況を
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1 |
遣塞曹掾史張政等 |
- 遣 = 派遣し
- 塞曹掾史張政等 = 塞曹掾史の張政らを
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1 |
因齎詔書黄幢 |
- 因 = そこで
- 齎 = 携え
- 詔書黄幢 = 詔書と黄幢を
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1 |
拝假難升米爲檄告喩之 |
- 拝假 = 拝して仮に授け
- 難升米 = 難升米を
- 爲檄 = 檄文とし
- 告喩之 = 告げ諭した
卑弥呼の死

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1 |
卑彌呼以死大作冢 |
- 卑彌呼 = 卑弥呼は
- 以死 = 死去し
- 大作 = 大きく作った
- 冢 = 墓を
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1 |
徑百餘歩 |
- 徑 = 直径
- 百餘歩 = 百余歩
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1 |
徇葬者奴婢百餘人 |
- 徇葬者 = 殉葬された者は
- 奴婢 = 奴婢
- 百餘人 = 百余人
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1 |
更立男王國中不服 |
- 更 = 改めて
- 立 = 立てた
- 男王 = 男王を
- 國中 = 国中が
- 不服 = 従わず
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1 |
更相誅殺當時殺千餘人 |
- 更 = 再び
- 相誅殺 = 互いに殺し合い
- 當時 = その時
- 殺 = 殺された者は
- 千餘人 = 千余人
卑弥呼の死後の政変と台与の出現
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1 |
復立卑彌呼宗女壹與 |
- 復 = 再び
- 立 = 立てた
- 卑彌呼宗女 = 卑弥呼の宗族の女子
- 壹與 = 壹與を
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1 |
年十三爲王國中遂定 |
- 年十三 = 年十三歳で
- 爲王 = 王とした
- 國中 = 国中は
- 遂定 = ついに安定した
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1 |
政等以檄告喩壹與 |
- 政等 = 張政らは
- 以檄 = 檄文を用いて
- 告喩 = 告げ諭し
- 壹與 = 壹與に
台与の朝貢
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1 |
壹與遣倭大夫率善中郎將掖邪狗等二十人 |
- 壹與 = 壹與は
- 遣 = 派遣し
- 倭大夫 = 倭の大夫
- 率善中郎將掖邪狗等 = 率善中郎将の掖邪狗ら
- 二十人 = 二十人を
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1 |
送政等還 |
- 送 = 送り
- 政等 = 張政らを
- 還 = 帰還させ
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1 |
因詣薹獻上男女生口三十人 |
- 因 = そのまま
- 詣薹 = 都へ赴き
- 獻上 = 献上し
- 男女生口三十人 = 男女の生口三十人を
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1 |
貢白珠五千孔 |
- 貢 = 貢ぎ
- 白珠 = 真珠
- 五千孔 = 五千孔
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1 |
靑大句珠二枚 |
- 靑大句珠 = 青色の大型の勾玉
- 二枚 = 二個
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1 |
異丈親錦二十匹 |
- 異丈 = 異なる丈の
- 親錦 = 高級錦
- 二十匹 = 二十匹
まとめ
今回読んだ後半部分からは、卑弥呼の政権が決して安定したものではなかったこと、そして彼女の死後に倭国が大きく揺れたことが、はっきり見えてきます。男王を立てて失敗し、再び女王を立て直したという流れは、倭国にとって「女王制」が単なる偶然ではなかったことを示しています。
また、魏から与えられた金印や黄幢、檄文、そして何度も繰り返される献上品の記録は、倭国と魏の関係が形式的なものではなく、かなり実務的で現実的な外交関係だったことを教えてくれます。
原文をそのまま読んでいくと、邪馬台国が「謎の国」ではなく、当時の東アジア世界の中に確かに組み込まれ認識された政治体だったことが実感できます。