邪馬台国はどこか? - 魏志倭人伝全文を読む Part 2

2026-01-27

魏志倭人伝全文解説 Part 2

魏志倭人伝の核心部、一大卒と女王の宮室と城柵の記述。この意味する所が最重要である。本記事のPart 2でも、『魏志倭人伝』の原文を用い、懲りずに記載内容の原文を一行一句ていねいに解読していく。

一般的な現代語訳や要約では省かれがちな表現や語順にも注目し、原文そのものが何を語っているのかを重視する構成とした。

邪馬台国の所在地や卑弥呼像については、さまざまな説が提示されてきたが、それらの多くは『魏志倭人伝』の部分的な引用に基づいている。この記事では結論を急がず、まず全文を通して読み解くことで、倭国の社会構造、政治制度、宗教観、外交の実態等を考えることを目的としている。

原文を正確に追うことで、各々が持つ従来のイメージとは異なる倭国像を考えることができるはずである。

魏志倭人伝の全文(暗号文) Part 2/3

航海と持衰

  • 頭不去蟣蝨 = 頭の虱(しらみ)を取らない
  • 衣服垢汚 = 衣服は垢で汚れている
  • 不食肉 = 肉を食べない
  • 不近婦人 = 婦人に近づかない
  • 如喪人 = 喪に服する者のようである
  • 名之爲持衰 = これを「持衰」と名づける
  • 若行者吉善 = もし旅が吉で順調であれば
  • 共顧 = 共に顧みて
  • 其生口財物 = 人や財物を守る
  • 若有疾病 = もし病が起これば
  • 遭暴害 = 突発的な災害に遭えば
  • 便欲殺之 = すぐにその者を殺そうとする
  • 謂其持衰不謹 = 持衰が慎みを欠いたためだと言う

産物・植物

  • 出 = 産出する
  • 真珠 = 真珠
  • 靑玉 = 青玉
  • 其山 = その山には
  • 有丹 = 丹(辰砂)がある
  • 其木有 = その木には
  • 枏 = 楠
  • 杼 = 梓
  • 豫 = 樟の類
  • 樟 = 樟脳樹
  • 楺 = 槻
  • 櫪 = 櫟
  • 投 = 檮
  • 橿 = 橿
  • 鳥號 = 鳥の名で呼ばれる木
  • 楓香 = 楓および香木
  • 其竹 = その竹には
  • 篠簳 = 細竹・矢竹
  • 桃支 = 桃の枝
  • 有薑 = 生姜があり
  • 橘 = 橘があり
  • 椒 = 山椒があり
  • 蘘荷 = 茗荷がある
  • 不知以爲滋味 = それらを調味料として用いることを知らない
  • 有 = 存在する
  • 獮猴 = 猿
  • 黒雉 = 黒い雉

占い

  • 其俗 = その風俗では
  • 擧事 = 事を起こすとき
  • 行來 = 行動する際
  • 有所云爲 = 何かをしようとする場合
  • 輒 = すぐに
  • 灼骨 = 骨を焼き
  • 而卜 = 占い
  • 以占吉凶 = 吉凶を占う
  • 先告 = 先に告げる
  • 所卜 = 占う内容を
  • 其辭 = その言葉は
  • 如令龜法 = 亀卜の法に従う
  • 視 = 見て
  • 火坼 = 焼け割れを
  • 占兆 = 占兆とする

文化

  • 其會同 = 集会の際には
  • 坐起 = 座るにも立つにも
  • 父子男女 = 父子・男女の区別なく
  • 無別 = 区別がない
  • 人性 = 人々の性質は
  • 嗜酒 = 酒を好む
  • 魏略曰 = 『魏略』に言う
  • 其俗 = その風俗は
  • 不知正歳 = 正確な年の始まりを知らず
  • 四節 = 四季の節目も知らない
  • 但計 = ただ
  • 春耕 = 春の耕作と
  • 秋収 = 秋の収穫を
  • 爲年紀 = 年の区切りとする
  • 見大人 = 身分の高い者を見ると
  • 所敬 = 敬うべき相手として
  • 但摶手 = 手を打ち合わせ
  • 以當 = それをもって
  • 跪拝 = 跪拝の代わりとし
  • 其人 = その人物に対する
  • 壽考 = 寿命は
  • 或百年 = 百年に及ぶ者もあり
  • 或八九十年 = 八、九十年の者もいる
  • 其俗 = その風俗では
  • 國大人 = 国の有力者は
  • 皆 = 皆
  • 四五婦 = 四、五人の妻を持つ
  • 下戸 = 身分の低い者でも
  • 或二三婦 = 二、三人の妻を持つことがある
  • 婦人 = 婦人は
  • 不淫 = 淫らでなく
  • 不妬忌 = 嫉妬せず
  • 不盗竊 = 盗みをせず
  • 少諍訟 = 争いも少ない
  • 其犯法 = 法を犯した場合
  • 輕者 = 軽罪なら
  • 没其妻子 = 妻子を没収される
  • 重者 = 重罪なら
  • 滅其門戸 = 家を滅ぼされ
  • 及宗族 = 一族に及ぶ
  • 尊卑 = 身分の上下には
  • 各有差序 = それぞれ序列があり
  • 足相臣服 = 互いに服従する
  • 収租賦 = 租税を徴収し
  • 有邸閣 = 倉庫がある
  • 國國 = 国ごとに
  • 有市 = 市があり
  • 交易 = 交易を行い
  • 有無 = 物資の有無を補う

一大卒

  • 使 = 任命して
  • 大倭 = 大倭(官職)に
  • 監之 = 監督させる
  • 自女王國以北 = 女王国より北では
  • 特置 = 特別に
  • 一大率 = 一人の大率を置き
  • 檢察諸國 = 諸国を監察する
  • 諸國 = 諸国は
  • 畏憚之 = これを恐れる
  • 常治 = 常に治めるのは
  • 伊都國 = 伊都国である
  • 於國中 = 国の中において
  • 有如刺史 = 刺史のような存在がいる
  • 王 = 女王は
  • 遣使 = 使者を遣わし
  • 詣京都 = 都へ赴かせ
  • 帯方郡 = 帯方郡
  • 諸韓國 = 諸韓国
  • 及郡使倭國 = 郡の使者が倭国に来る場合
  • 皆 = すべて
  • 臨津 = 港に臨み
  • 搜露 = 検査し
  • 傳送 = 伝送する
  • 文書賜遣之物 = 文書や下賜品を
  • 詣女王 = 女王のもとに至るまで
  • 不得差錯 = 誤りがあってはならない
  • 下戸 = 身分の低い者が
  • 與大人 = 身分の高い者と
  • 相逢 = 出会えば
  • 道路逡巡 = 道を譲ってためらい
  • 入草 = 草むらに入る
  • 傳辭説事 = 言葉を伝え事を述べる時
  • 或蹲 = しゃがむか
  • 或跪 = 跪く
  • 兩手 = 両手を
  • 據地 = 地につけ
  • 爲之恭敬 = 敬意を表す
  • 對 = 応対するとき
  • 應聲 = 声を合わせ
  • 曰噫 = 「あい」(はい?)と言い
  • 比如然諾 = 承諾を示す

倭国大乱と女王

  • 其國 = その国は
  • 本亦 = もとは
  • 以男子爲王 = 男子を王としていた
  • 住 = その状態が
  • 七八十年 = 七、八十年続き
  • 倭國亂 = 倭国は乱れ
  • 相攻伐 = 互いに攻め合い
  • 歷年 = 年月を経た
  • 乃 = そこで
  • 共立 = 共に立てた
  • 一女子 = 一人の女子を
  • 爲王 = 王とした
  • 名曰 = 名を
  • 卑彌呼 = 卑弥呼という
  • 事鬼道 = 鬼道に仕え
  • 能惑衆 = 人々をよく服従させた
  • 年已長大 = 年はすでに成人し
  • 無夫婿 = 夫はいない
  • 有男弟 = 男の弟がいて
  • 佐治國 = 国政を補佐する
  • 自爲王以來 = 王となって以来
  • 少有見者 = 人前に姿を見せない
  • 以 = もって
  • 婢千人 = 千人の侍女が
  • 自侍 = 自らに仕える
  • 唯有 = ただ
  • 男子一人 = 一人の男子だけが
  • 給飲食 = 飲食を給し
  • 傳辭 = 言葉を伝え
  • 出入 = 出入りする
  • 居處 = 住居は
  • 宮室 = 宮殿で
  • 樓觀 = 楼閣があり
  • 城柵 = 城と柵が
  • 嚴設 = 厳重に設けられている
  • 常有 = 常に
  • 人 = 人が
  • 持兵 = 武器を持ち
  • 守衞 = 守衛している

女王国の東

  • 女王國東 = 女王国の東に
  • 渡海千餘里 = 海を千余里渡ると
  • 復有國 = さらに国があり
  • 皆倭種 = すべて倭人である
  • 又有 = また
  • 侏儒國 = 侏儒国がある
  • 有其南 = その南に
  • 人長 = 人の背丈は
  • 三四尺 = 三、四尺である
  • 去女王 = 女王国から
  • 四千餘里 = 四千余里離れている
  • 又有 = また
  • 裸國 = 裸国
  • 黒齒國 = 黒歯国がある
  • 復在其東南 = さらに東南にあり
  • 船行一年 = 船で一年行けば
  • 可至 = 到達できる

倭国の位置

  • 參問 = 総合すると
  • 倭地 = 倭の地は
  • 絶在 = 離れて存在し
  • 海中洲㠀之上 = 海中の島々の上にある
  • 或絶 = 離れている所もあり
  • 或連 = 連なっている所もあり
  • 周旋 = 巡ると
  • 可五千餘里 = 五千余里に及ぶ

女王の朝貢(景初2年=西暦238年)

  • 景初二年六月 = 西暦238年6月
  • 倭女王 = 倭の女王が
  • 遣大夫 = 大夫
  • 難升米等 = 難升米らを
  • 詣郡 = 郡に遣わした
  • 求 = 求めて
  • 詣天子 = 天子に謁し
  • 朝獻 = 朝貢する
  • 太守劉夏 = 太守の劉夏が
  • 遣吏 = 役人を遣わし
  • 將送 = 護送して
  • 詣京都 = 都へ向かわせた
  • 其年十二月 = その年十二月
  • 詔書 = 詔書で
  • 報倭女王曰 = 倭の女王に答えて言う

まとめ

倭国と邪馬台国の関係、伊都国の一大卒の存在、女王の宮室・城柵、倭人の風習など興味深い記載が続く。政治システムは粗野で暴力的ではあるが非常に規律正しいような印象を受ける。特に、女王卑弥呼を中心とした統治体制、諸国を監察する役職、市場や租税制度、刑罰の基準などは、具体的かつ一貫した記述で示されている。

また、卑弥呼は宗教的存在であると同時に、外交と内政の要として機能しており、その権威は中国王朝からの正式な冊封によって裏付けられている。こうした点は、原文を通読することで初めて立体的に想像できる。

暦の不使用

通常は省かれがちなポイントであるが、邪馬台国内には「カレンダー(暦や年始や四季)が無い」というのも非常に貴重な情報である。

この時代は暦どころか日付すら使っていたのか疑わしい。後世になって古事記などを編纂する時の苦労が伺える記述であり、なぜ数理統計的補正が必須かの説明になる。

また、邪馬台国内では田植えと収穫の時期しか使っていないが、春の田植えと秋の収穫の国内での同期は女王の重要な役割の一つである可能性は高い(=耶馬台国内の租税の徴収時期や収穫物の質や量に直結する)。例えば、神話には天照大御神が新嘗祭(収穫の祭り)を行った事績が記載されている。

邪馬台国がどこにあったのかを考える前に、まず「どのような国であったのか」を正確に把握することが重要である。本記事が、『魏志倭人伝』を根拠とした議論を行うための、確かな土台となれば幸いである。

Copyright© ふくおか邪馬台国探索プロジェクト , 2026 All Rights Reserved.