1 帯方郡から邪馬台国までの行程 - 塩田泰弘
日本の古代史の上で、最も注目されているのは、邪馬台国はどこにあるかということであろう。邪馬台国は、「魏志倭人伝」に記述されている倭人の国の使訳通ずる30国の盟主、女王卑弥呼が都をおいている国である。
「魏志倭人伝」の行程と「水行十日陸行一月」について
「魏志倭人伝」には、帯方郡から邪馬台国までの距離について「郡より女王国に至る万二千余里」と明確に記されている。この「郡」は、魏が朝鮮半島北部を支配するために設置した帯方郡であり、その郡役所が置かれている所(帯治)をいう。「女王国」とは、この文献では女王卑弥呼が都をおいている邪馬台国のことである。
さらに、「魏志倭人伝」には、帯方郡から邪馬台国に至るまでに経過する二国から国々までの行程が記載されている。「万二千余里」の内訳となる行程である。この行程の記述は不確固とて詳細であるが、不確固から邪馬台国までの行程については、その詳細が記されておらず、このため様々な解釈がなされている。この行程に関する検討は、邪馬台国の所在地のほか本日のテーマである「水行十日陸行一月」についても重要である。